視力に静止視力と動体視力があります。平仮名やCの向きで視力を測る視力検査を殆どの人が経験していると思います。この静止状態の物がどれくらい見えるかが静止視力です。静止視力を検査する視力検査が、屈折異常による近視・遠視・乱視・老眼と診断する基本的検査になります。静止視力に対して動く物がどれくらい見えるかが動体視力です。静止視力がよくとも動体視力がわるければ動いている物をはっきり見ることはできません。動体視力が低下すると、今まで何気なく見ていた動くものが見極められなくなり、車を運転しているときに標識が見づらくなったり、エスカレーターにうまく乗れなくなったりします。動体視力の低下の原因は、動体の方向や速度を予測して眼をうまく跳ばす眼球運動の能力の低下です。動体視力は個人差がありますが、15歳をピークに動体視力は低下傾向にあり、40歳を境に極端に落ちるといわれます。満70歳以上で運転免許を更新する時は動体視力の検査が義務化されているほどです。動体視力の検査にはDVA動体視力計があります。視力検査で使うランドルト環(C)を動かして方向を見分けるものです。速いスピードで識別できるほど動体視力がよいです。5~10歳の動体視力が急速に発達する時期に動体視力を鍛えることで動体視力がより発達すると考えられます。
静止視力と動体視力
中心視力と中心外視力
視力には中心視力と中心外視力があります。普段は意識せずに見ようとする物に視線(網膜の中心窩)を合わせていることで視野全体が一様に見えているように感じるだけです。視力検査では中心視力を検査しています。視力に関係する神経が密集している中心窩に正しく像を結んでいるいるときを正視といいます。それ以外を非正視といい近視・遠視・乱視・老眼に分類されます。中心窩から外れた視力が中心外視力です。
網膜には錐体と桿体という2種類の視細胞があって光の強さ、色、形などを識別し、中心視力と中心外視力に関係しています。中心視力に関係する網膜の中心部(特に黄斑部中心窩)に多い錐体(錐状体)は、明るいところで働いて色を感じます。中心外視力に関係する網膜の中心窩には存在せずその周辺部に多い桿体(桿状体)は、色は感じませんが暗いところでも弱い光を感じて動きに敏感です。このように良い視力は中心窩の狭い範囲でしかないのですが、視力が良くない中心外視力は動くものには敏感ですから、視界の隅で動く物に反応して中心視力を使うよう連動することで必要な物を認識していくのです。
盲点(マリオット盲点)は黄班部中心窩から若干はなれたところにある円形の視神経がない部分です。盲点(マリオット盲点)の部分は視神経や血管などが眼の外に抜ける視神経乳頭の部分で、この盲点に光が結ばれた場合はその情報は脳に伝達されず「見えない」状態がおきます。
※黄班部中心窩にはっきりと像を結べない屈折異常によって近視・遠視・乱視・老眼などの視力障害が生じますが、黄斑そのものの変性でも黄斑変性症などの視力障害がおこります。
近視・遠視・乱視・老眼とは
近視・乱視・遠視は眼の屈折異常で、老視(老眼)は調節異常です。近くの物が見えにくい、遠くの物が見えにくい、物がだぶって見えるなどの状態になり、眼精疲労の原因にもなります。近視・乱視・遠視・老視(老眼)で目の疲れが重い眼精疲労では、肩こりや頭痛など身体にも影響がでてきますから、車の運転用やパソコンなど近くを見る作業用など目的に応じた正しい視力矯正が望まれます。屈折異常に目の病気が隠れている可能性もあります。特に視力低下が急激に進んだり他の症状が現われているときは専門医の受診をおすすめします。
○近視
近視とは、光が網膜より前で焦点を結んでしまう状態です。近視では近くのものは見えても遠くが見えにくくなります。近視の初期は仮性近視(偽近視)とよばれ、点眼薬や遠くを見るなどの視力回復トレーニングで改善されます。
○遠視
遠視とは、光の焦点が網膜よりも後ろにある状態です。遠視では近くの物も遠くの物も見えにくく、無理にピント合わせするために目が疲れやすいのが特徴です。遠視では早く老眼になりやすいといわれています。
○乱視
乱視とは、角膜の歪みにより目のピントが合う距離が縦方向と横方向で異なるために、物の輪郭がだぶって見えたり歪んで見える状態です。稀に、角膜ではなく水晶体の歪みや眼の表面の凹凸による乱視もあります。
○老視(老眼)
老視(老眼)とは、老視(老眼)は加齢により水晶体の厚みを調節する毛様体筋の柔軟性や水晶体そのものの弾力も衰えるため、ピント合わせが上手くできなくなった状態です。殆どの人が老視(老眼)になります。近視の人も老視(老眼)になります。
※屈折異常と調節異常の基本的治療は眼鏡やコンタクトによる視力矯正です。最近では、視力回復手術としてレーシック治療(レーザー屈折矯正手術)が注目されています。
近視とは
近視には、屈折性近視と軸性近視があります。近視の多くが屈折性近視です。屈折性近視とは、目に入ってくる光の屈折率が強く網膜の手前で焦点を結ぶため、遠くがぼやけて見える状態です。水晶体を収縮させる毛様体の緊張が続き水晶体が厚いままになっているため近視という屈折異常が起きるのです。近視では長時間近い物を見続けるため毛様体の緊張が解けない状態が続いた結果と考えられます。屈折性近視は年月とともに進行して20歳前半頃に進行は止まるといわれていますが、パソコンやテレビゲームなど近くを見る生活習慣・環境により成人になってからも近視が進むケースがあるようです。屈折性近視は眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正できます。近視に似た状態をかつては仮性近視と呼んでいましたが、現在は調節緊張(調節痙攣)と呼びます。この段階であれば、近いものを見続けないようにするなど日頃の目の使い方の改善、視力回復トレーニング、点眼などで直ります。近視になる前に対処して近視にならないことが大切になります。
軸性近視は、眼軸(角膜から網膜までの距離)が長いために網膜より手前に焦点を結ぶ近視です。軸性近視は若い時期に始まり一生を通して徐々に進行してていきます。軸性近視は遺伝傾向があります。
一般的なランドル環を使う視力検査では近視などの屈折異常を測定するには不十分で、近視の程度は近視度数という数値で表します。数値がマイナス方向に大きくなるほど強い近視となります。逆に数値がプラス方向に大きくなるほど強い遠視となります。
■近視度数と視力の関係
○近視度数0Dは、視力1.0~1.2
○近視度数-1Dは、視力0.5程度
○近視度数-2Dは、視力0.1程度
○近視度数-2Dよりマイナス値が大きいと視力0.1以下
近視が強くなるほど網膜剥離が起きやすいことが知られています。近視では水晶体の形状により網膜が剥がれやすく、飛蚊症や光視症の症状がでやすいです。これらの症状が急激に現われたりひどくなったりしたら眼科医を受診してください。
遠視とは
遠視には、近視と同様に屈折性遠視と軸性遠視があります。遠視とは、角膜や水晶体の光屈折率が弱かったり眼軸長が短いために、網膜の後に焦点が結ばれる屈折異常です。近視とは逆の状態です。遠視の度合いが軽く若い人であれば、調節機能により網膜上に焦点を結ぶことができますが、常に毛様筋を緊張させているために目が疲れやすく、調節機能がうまくは働かなければ物がぼやけて見えてしまいます。遠視は眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正できます。
視力検査の結果が正視でも遠視が隠れていることがあります。遠視眼であっても無意識に調節機能が働くために自覚がなかったり、一般的な視力検査の結果に現われない遠視を潜伏遠視と呼びます。一般的に潜伏遠視は加齢により調節機能が低下することで遠視が現れてきます。この潜伏遠視は調節麻痺剤を使用することで測定ができます。
遠視では眼球内の前房が浅くなって隅角が狭くなるために、緑内障発作を伴う閉塞隅角緑内障になりやく、閉塞隅角緑内障は中年以降の女性に発症しやすいといわれています。
乱視とは
いわゆる乱視とは、角膜の歪みにより目のピントが合う距離が縦方向と横方向で異なるために、物の輪郭がだぶって見えたり歪んで見える状態です。これを正乱視と呼びます。一般的に乱視といった場合は正乱視を指します。稀に角膜ではなく水晶体の歪みや角膜の変性による乱視があります。これを不正乱視と呼びます。
正乱視においては、角膜の縦方向と横方向のカーブが均一でなく光の焦点は二つに分かれてしまい、物が二重に見えたり視力が悪いなどの症状があります。乱視に近視や遠視が重なっている場合もあります。正乱視は眼鏡やコンタクトレンズで矯正できます。
不正乱視においては、角膜のカーブが不規則に変化(変性)することで焦点がどこにも結ばれない状態です。円錐角膜や角膜潰瘍などで不正乱視が引き起こされます。円錐角膜は軽い乱視から始まるといわれています。円錐角膜は角膜の変性によるもので、思春期に発症し30歳ころまで進行して落ち着くようで、人種に関係なく女性に多い目の病気といわれています。円錐角膜の原因ははっきりしていません。不正乱視は眼鏡での矯正はできず、特殊な治療用ハードコンタクトレンズを使用することになります。乱視矯正が不十分だったりコンタクトレンズ使用が出来ない場合は、レーザー手術や角膜移植の治療が検討されます。
老眼とは
老眼とは、正式には老視のことで、水晶体の調節力が低下した状態です。殆どの人が老視(老眼)になります。近視・乱視・遠視は眼の屈折異常ですが、老眼(老視)は調節異常です。老眼(老視)では、加齢により水晶体の厚みを調節する毛様体筋の柔軟性や水晶体自体の弾力も衰えるため、ピント合わせが上手くできなくなります。細かい字が見えにくい、暗いと字を読みにくい、夕方から字が読みにくくなるなど老眼の自覚症状が現われるのは40歳を過ぎた頃からで、65歳頃まで進行するといわれています。近視眼でも老視(老眼)になりますが老眼を自覚しにくく、遠視眼はもともと遠くも近くも見る力が低い眼のため比較的若い年齢から老眼を自覚することが多いといわれています。
老視(老眼)では、近くのものを見るときに遠視と同じ状態になります。この場合は遠視と同じ眼鏡で視力を矯正できます。老視(老眼)では屈折力の調整範囲が狭くなるために遠近両用のレンズが必要になることがありますし、老視(老眼)の進行に合わせてレンズを変更する必要があります。老眼鏡を使用したとしても老視(老眼)が進むわけではありませんから、自覚症状が現われ目が疲れるようなら老眼鏡を使用しましょう。注目のレーシック治療(レーザー屈折矯正手術)は老視(老眼)には適していないようです。ですが、他の治療で改善されるともいわれています。年だからと老視(老眼)であきらめることはありません。
コンタクトレンズの基礎知識
近視・遠視・乱視・老眼の矯正方法は主にメガネとコンタクトレンズです。コンタクトレンズは高度医療機器のクラスⅢに分類され、コンタクトレンズは医師でなければ処方してはいけないことになっています。コンタクトレンズを購入のしやすい通販などで利便性が向上した反面、基本的なコンタクトレンズの知識がないばかりに、目の病気や視力障害などの進行に気づかないケースも増加しています。また、ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズ・使い捨てソフトコンタクトレンズの種類も増えて選ぶのに迷うほどです。目の状態にあったコンタクトレンズ選び・コンタクトレンズの知識・適正なレンズケアが大切になります。
■コンタクトレンズの種類と選び方
安全かつ快適にコンタクトを使用するには眼科医の診断が不可欠です。希望を眼科医に伝え、診断と処方をもとにコンタクトレンズを決めてください。コンタクトレンズの素材やデザイン(レンズの直径厚み・度の入っている部分の大きさなど)でフィット感や矯正視力に影響します。メガネやコンタクトレンズのバリエーションは広いですから、普段はメガネやハードコンタクトレンズを使用して、スポーツや旅行の時に使い捨てコンタクトレンズを使用するなど、ライフスタイルやその時々に合ったコンタクトレンズを併用する人も増えているようです。
○使い捨てソフトコンタクトレンズ
ソフトコンタクトレンズは水分を含むと柔らかくなる素材のレンズで、装用している感じが殆どなく、ずれにくく外れにくいのが特徴です。酸素透過性に優れたレンズもあります。レンズに蓄積される汚れの目に対する悪影響の軽減や破損・紛失の心配がないなどの理由から、使い捨てのソフトコンタクトレンズがソフトコンタクトレンズの主流になっています。使い捨てのソフトコンタクトレンズには1日・1週間・2週間で新しいレンズに交換するタイプがあります。ライフスタイルや経済性を考えて自分に合ったタイプの使い捨てコンタクトレンズを選択するのがよいでしょう。
○酸素透過性ハードコンタクトレンズ
ハードコンタクトレンズは水分を殆ど含まない素材のレンズで、素材の分子の隙間を通して角膜に酸素を供給します。硬い素材のため装用開始時にゴロゴロするような異物感を感じることがあります。ハードコンタクトレンズでは近視・遠視と同時に乱視(一部の乱視を除く)の矯正も可能です。

